先生からのお便り 2012年05月05日
昨年11月13日、日本小児科学会より新たに予防接種のスケジュールが発表され、B型肝炎ワクチンがスケジュールに組み込まれました。そして、この4月26日、厚生省予防接種委員会にて、6種の任意予防接種(B型肝炎、Hib、肺炎球 菌、おたふくかぜ、水ぼうそう、子宮頸がんワクチン)が、今後定期予防接種に位置付けられることが決まりました。
B型肝炎ワクチン・・・ご存知ですか?
現在、日本では、お母さんがウイルス保有者(キャリアー)で、出産時に母親から赤ちゃんに感染するのを防ぐ目的で接種されます。したがって、ほとんどのお子さんは、このワクチンの接種を受けていません。
現在、世界的には約2~3億人のキャリアーが、日本には100万人のキャリアーがいると推定されています。日本で母子感染予防措置が行われるようになって、キャリアーは減少傾向にあります。キャリアーはアフリカ、アジアが中心ですが、現在欧米で感染が拡大しているタイプは慢性化しやすく、そのB型肝炎ウイルスが今後世界で蔓延してくることが危惧されています。そのため、欧米先進国では、赤ちゃんが生まれたらすぐに、母親がB型肝炎キャリアーであるか否かを問わず、全員に対して接種が行われています。
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスの感染によりおこる病気で、慢性化すると肝硬変や肝がんを起こします。感染力は強く、ウイルス保有者 (キャリアー)の血液や体液を介して感染します。「B型肝炎は通常の生活では感染しない」と従来認識されていましたが、保育園や運動部での集団感染の報告 がみられるようになってきました。B型肝炎ウイルスは、血液はもちろんですが、唾液や汗、涙などの体液からも検出されることがあります。B型肝炎ウイルス の感染ルートは、母子感染、輸血、性交渉だけではないのです。
キャリアーが減少傾向にあったことや任意接種であるために1万5千円~2万円の費用を要することなどから、積極的にお勧めしてきませんでした。しかし、個人的には、今話題になっているポリオワクチンより、はるかに優先してほしいワクチンです。定期予防接種として、全員が接種できるまでには、もうしばらく時間を要します。とくに保育園・幼稚園など集団生活が始まる前に、ご検討いただければ幸いです。