受診の経緯は・・・それぞれの思い|宇都宮市の小児科

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先生からのお便り

受診の経緯は・・・それぞれの思い

先生からのお便り 2015年08月15日

「今日はどうなさいましたか?」

くろさきこどもクリニックでは来院したご家族に、受付スタッフがお聞きします。

本来時間が許せば、私が診察室でお聞きする内容ですが、それでなくとも長時間お待たせすることが多いため、このような対応になっています。その結果、まれにご家族の来院した意図を汲み取ることができずに、期待を裏切る結果になってしまうことがあり、たいへん申し訳なく思っています。

クリニックを受診する目的は同じ症状でもご家族により異なり、私たちスタッフはそれを推し量らなければならないと思っています。たとえば、『咳』を主訴として受診した場合も、一刻も早く咳を軽減してゆっくり眠れることを目的としている場合もあれば、肺炎を心配して長期間続くその原因を知りたい場合もあります。スッタフがメモした内容を、私が十分理解、確認しないことがトラブルの原因になっていることがあり、反省することの多い毎日です。

 

今夏流行している手足口病、その受診の目的もさまざまで、多くのご家族がその対応に戸惑う姿がありました。手足口病はコクサッキーウイルスやエコーウイルスなどによる感染で、ウイルスの種類によっては典型的な症状を呈する場合もあれば、診断に迷うケースも多々あります。ウイルス性疾患にて治療薬はなく、感染を完全に防ぐことも困難にて、医療的には口内炎で食欲が落ちているお子さまの体調を維持することが何よりも大切で、明確に手足口病か否かの診断をつける必要はないと考えています。しかし、最近は保育園や幼稚園で診断を求めることが多く、手足口病だと登園できない保育園、逆に手足口病の診断が明確につけば登園が可能な保育園など対応は様々で、その対応に翻弄される場合も多々生じています。先日保育園に通っている微熱、口内炎の1歳男の子が受診しました。その診断を確定することが主な受診の目的と判断し「手足口病かどうかはどっちでもいいこと」とお話ししましたが、ご家族は受診前夜、お子さまが不機嫌で眠れなかったことが一番ご心配だったようで、「そのような乱暴な説明は許せない」とお叱りを受けました。配慮が足りなかったと、深く反省しました。

 

私がいたらないために、誤解が生じることが多いのですが、できるだけお子さまのために、受診なさる皆様と医療サイドで考え方の違いが生まれないように、日々の診療で感じていることを少しお話ししたいと思います。

 

[ 診断について ]

“明確な診断を確定したのちに、それに対応した治療”これが最も望ましい診療には違いありませんが、小児科の一般診療においては、そのようなケースは少ないのが現状です。小児科の診療の基本は『子どもにつらい思いをさせない』こと、したがって、大きな病院は別として、一般的な症状に対して検査は第一に考えません。 症状の経過をみながら対応します。1回の診察ですぐに結論をだすこと、治すことを目標とはしていません。インフルエンザの迅速抗原検査が普及して以降、アデノウイルス、ロタウイルスなどいくつかのウイルスや細菌の迅速検査が一般的に使われるようになり、より正確な診療ができるようになりました。しかし、皆様にどの病気もすぐに結論がでるようなイメージができてしまったことは大変残念に思っています。多くの疾患は1回の検査ですべての結論がでるようなケースはまれ、すべての結論をつけようと思った場合には、繰り返しの検査と時間が必要になります。場合によっては、保険診療の範囲を超えた検査が必要になります。どこまで結論を出すかは、お子さまの健康に及ぼす疾患の重症度と検査を受けるお子さまの負担を考慮して、判断します。病気のすべての原因と日々の経過の状況を詳細に知りたいのは、私もご家族の皆様と同じ気持ちですが、今後もお子さまの負担を優先し対応していきたいと思っています。

 

[ 治療について ]

“病気を治してほしい”と思い受診なさるわけですが、かぜなどの一般的な子どもの病気は基本的に特効薬はありません。小児科医は治そうと思っているわけではなく、症状を緩和し治っていくのを見守っているだけなのです。その中に、まれですが、命に関わる疾患(心筋炎など)が隠れていることがあり、そのような子どもたちを見逃さずに助けてあげたい、その一心で日々診療しているといっても過言ではありません。

 

また、小児科医は症状を止めない治療がモットー。鼻水止め(抗ヒスタミン剤)は眠気を催し、小さなお子さまが熱が出たときには痙攣の誘発につながります。一部の下痢止めは腸の動きを弱め、逆に症状を悪化させます。すぐに症状を治してあげたいというご家族の気持ちは十分に理解できますが、子どもはひとつひとつ病気を乗り越えて、強い免疫力をつけていくのです。皮膚症状はきちんとケアをしてあげないと、見守っていても良くなりませんが、一般的なかぜ症状は、子どもたちができるだけつらい思いをしないよう、看護することが大切と考えています。

 

診療において、100%正しいことはありません。病は思いがけない経過をたどることもあり、常に謙虚に対応したいと考えています。また、世の中の常識からも著しく外れないよう心がけていますが、人それぞれ価値観も違い、私の説明も至らない(忙しさを理由にしてはいけないのですが、口調が乱暴になど)点があり、皆様に不愉快な思いをさせてしまうことがこれからもあるかもしれません。ご不審な点がありましたら、遠慮なく教えていただけたら幸いです。

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